スポット溶接命令はいつ、どのようにスポット溶接を行うかをロボットに指示します。命令はシングルガンとデュアルガンで使用できます。以下の7種類のスポット溶接命令があります。
スポット命令
スタッド溶接命令
ストローク命令
コンタクタ
ガンコンタクタ
ステッパリセット
溶接機リセット
冷却機リセット
スポット命令はロボットにスポット溶接を指示します。ここではエアガン仕様のスポット溶接命令を説明します。
スポット[WID=1,*,EP=*,P=*,S=x,EP=*,*]命令は、ストローク状態、イコライズ圧(EP)、バルブ圧(P)、溶接条件(S)を使用してシングルガンでスポット溶接を実行します。表26."スポット命令"を参照ください。
この命令の形式は、スポット初期設定の設定によって異なります。溶接IDが無効になっている場合は、WIDが表示されません。バルブ圧信号が無効になっている場合は、Pが表示されません。ダブルストロークが無効になっている場合は、ストローク状態が表示されません。イコライズ圧信号が無効になっている場合は、EPが表示されません。溶接ID、ストローク状態、イコライズ圧信号、バルブ圧信号、ガン検出は、スポット初期設定で有効とされている場合だけ有効になります。
スポット[WID(*,*):(*,*),EP=(*,*),P=(*,*),S=(x,y),EP=(*,*),(*,*)]命令は、ストローク状態、イコライズ圧(EP)、バルブ圧(P)、溶接条件(S)を使用して、デュアルガンでスポット溶接を実行します。(*,*)の中のカンマの左側にある項目はガン1に適用される値であり、カンマの右側にある項目はガン2に適用される値です。溶接ID(WID)は溶接打点情報を管理するための指標として使用して下さい。表26."スポット命令"を参照ください。
この命令の形式は、スポット溶接の設定によって異なります。溶接IDが無効になっている場合は、WIDが表示されません。バルブ圧信号が無効になっている場合は、Pが表示されません。ダブルストロークが無効になっている場合は、ストローク状態が表示されません。イコライズ圧が無効になっている場合は、EPが表示されません。溶接ID、ダブルストローク、イコライズ圧、バルブ圧、ガン検出の各信号は、スポット初期設定で有効にされている場合にだけ表示されます。
表26.スポット命令
命令 |
説明 |
---|---|
WID = x |
溶接機に送られる溶接ID。溶接を識別するため、プロセス情報記録機能でも使用されます。 |
ハンカイ |
溶接前半開 |
* |
溶接前ストローク不変 |
EP = コウアツ |
溶接前高圧イコライズ |
EP = チュウアツ |
溶接前中圧イコライズ |
EP = テイアツ |
溶接前低圧イコライズ |
EP = x |
溶接前イコライズ圧数値指定(0〜31) |
P = コウアツ |
バルブ圧高 |
P = チュウアツ |
バルブ圧中 |
P = テイアツ |
バルブ圧低 |
P = x |
バルブ圧数値指定(0〜15) |
S = x |
溶接スケジュール番号 |
EP = コウアツ |
溶接後高圧イコライズ |
EP = チュウアツ |
溶接後中圧イコライズ |
EP = テイアツ |
溶接後低圧イコライズ |
EP = x |
溶接後イコライズ圧数値指定(0〜31) |
ゼンカイ |
溶接後全開 |
* |
溶接後ストローク不変 |
先行値(センコウ)を指定すると、スポット打点ごとにストローク信号(B)、加圧信号(G)の先行時間(打点に到達する前の信号先出し時間)を変更することができます。ストローク信号(B)はダブルストローク時のみ表示されます。時間指定、距離指定の変更はスポット装置設定画面で行います。
先行時間(センコウ)を指定しない場合は、スポット装置設定画面のストローク先行時間、加圧先行時間が使用されます。先行値を指定できるのはスポット命令付きの動作命令とストローク命令付きの動作命令の中だけです。先行値を使用するスポット命令付きの動作命令形式については、図147."ダブルストローク有効時のスポット命令の先行値"と図148."ダブルストローク無効時のスポット命令の先行値"を参照ください。
動作命令に付いていないスポット命令の中では先行指定を使用できません。
スタッド溶接命令は、スポットの機能が制限されたスポット命令です。
スポット[S=x]命令は、マルチ装置が有効の時にはプログラムヘッダーで指定された装置を使って、シングルガンのためのスタッド溶接を開始します。この種のスポット命令がスタッド溶接で使用されます。表26."スポット命令"を参照ください。
ストローク命令は、エアガンのストロークを制御します。
ストローク[(アクション)]命令は、シングルガンを開閉したり、状態を一定に保ちます。 図149."ストローク[(アクション)]"を参照ください。
ストローク[(アクション1),(アクション2)]命令は、デュアルガン構成の場合に、各ガンを開閉したり、状態を一定に保ちます。カンマの左側の項目はガン1に適用される値で、カンマの右側にある項目はガン2に適用される値です。図150."ストローク[(アクション1),(アクション2)]"を参照ください。
先行指定を使用するストローク動作付加命令の形式については、図151."ストローク命令の先行値"を参照ください。
TPプログラムの中での先行値の使用例として、例3."先行値プログラム例"を参照ください。
例3.先行値プログラム例
1:カクジク イチ[1] 100% イチギメ スポット[ハンカイ,S=1,ゼンカイ,センコウ(B=300,G=150)] 2:カクジク イチ[2] 100% ナメラカ100 3:カクジク イチ[3] 100% ナメラカ100 4:カクジク イチ[4] 100% イチギメ ストローク[ハンカイ,センコウ=20] 5:カクジク イチ[5] 100% イチギメ スポット[*,S=2,ゼンカイ,センコウ(B=300,G=150)] 6:カクジク イチ[6] 100% イチギメ スポット[ハンカイ,S=1,ゼンカイ,センコウ(B=5,G=0)]
この例では、スポット装置画面で標準のストローク半開先行時間が300msに設定され、標準のガン加圧先行時間が150msに設定されているとしています。
1行目では、目標位置に到達する300ms前にストローク切り替えを開始し、150ms前にガン加圧を始めます。
4行目では、目標位置に到達する20ms前にストローク切り替えを開始します。
5行目では、目標位置に到達する300ms前にストローク切り替えを開始し、150ms前にガン加圧を始めます。
6行目では、目標位置に到達する5ms前にストローク切り替えを開始します。ロボットが目標位置に到達するまでガン加圧は開始しません。
1行目と5行目では先行値の指定は必要ありません。例として明確にするために追加したものです。ストローク半開先行時間の標準値が300msに、ガン加圧先行時間の標準値が150msに設定されているため、1行目と5行目では先行値の指定する必要がありません。先行値を指定しない場合はスポット装置画面で設定された値が使用されます。
この他、スポット溶接の制御に使用できる命令には以下のものがあります。
コンタクタは一時回路を溶接トランスから分離する電気・機械式のコンタクタを開閉する命令です。ハードウェアの設定に応じて溶接機によって起動されます。複数の溶接機を使用する場合には、WC=#に溶接機番号を指定します。
ガン コンタクタは溶接を実行していない時に、二次回路を溶接トランスから分離するコンタクタを開閉するプログラム命令です。
ステッパ リセットは溶接機のステッパカウンタを、初期ステッパ値にリセットする命令です。WC=#に溶接機番号を指定します。SN=#にステッパ番号を指定します。SV=#にはステッパバルブ番号を指定しますが、現在は使用されていません。
ヨウセツキ リセットはコントローラから溶接機に溶接エラーのリセット信号を送付するプログラム命令です。一般的には、この命令は各サイクルの最初に実行します。WC=#に溶接機番号を指定します。
レイキャクキ リセットは溶接装置の冷却機をリセットするよう指示する信号を溶接機に送信する命令です。一般的には、この命令は冷却機のエラーの後に実行します。E=#に冷却機の装置番号を指定します。この命令については、装置番号はヘッダーにより指定されたものではありません。したがって、1つのプログラムで全て装置の冷却機をリセットすることができます。