マスク

マスクを使うと、教示したモデルパターンから不要な特徴を取り除くことができます。

モデルを教示すると、指定した領域内の全ての特徴がモデルパターンとして使用されます。この中にはモデルパターンの背景やワークの余計な特徴や汚れなどのモデルパターンとして不適切な特徴も含まれます。そのような部分をマスク(赤色)で塗りつぶすことで、モデルパターンから除外します。

[使用する]のチェックを外すと、マスクは無効になります。

パターンマッチツールは欠けている模様があると違う形と判断しますが、余計な模様があっても気にしない特性があります。したがって、モデルパターンを教示したときにだけ画像に写っていたような模様はモデルパターンに登録しない方が望ましいことになります。

モデルパターンとして教示した画像に、以下のような部位が含まれている場合には、その部分をマスクしてモデルパターンから取り除きます。

①カメラからの距離が違うところ
カメラで物体を撮像すると「視差」が生じます。実際の空間で、物体が同じ距離を移動した場合でも、カメラから物体までの距離が違うと、カメラで取り込んだ画像上での移動量は違ってしまいます。この移動量の差を「視差」と呼びます。
高さのある物体の場合、物体の上下ではカメラからの距離が違うため、視差によりカメラで取り込んだ移動量は違ってしまいます。つまり、物体を動かすことで、画像上では位置だけでなく形も変わってしまうのです。
例えば、図(i)のようなコップを考えます。
画像の中央付近に写るようにコップを置いたときにはコップを真上から見ることになるため、図(ii)のようにカメラには同心の二重円に写ります。しかし、画像の端に写る位置にコップを置くと、視差の影響で図(iii)のように中心がずれた二重円に写ります。したがって、図(ii)と図(iii)は形が違うので、図(ii)をモデルパターンとして教示しても、図(iii)は検出できません。
(i)
(ii)
(iii)
図:視差の影響
この問題を避けるためには、カメラからの距離が違う部分はマスクして、モデルパターンから取り除く必要があります。コップの場合、外側/内側のどちらかの円をマスクします。
前述のように、パターンマッチツールは許容範囲内であればモデルパターンと画像に写ったパターンのひずみを許容できます。視差により発生する形の違いが、ひずみの許容範囲以内であれば、パターンマッチツールは検出します。
また、カメラとワークの距離を長くすることで、視差の影響を軽減できます。
②見え方が一定しないところ
ワークの汚れのように、個体を変えたり位置を変えたりするたびに違って見える模様が写ることがあります。パターンマッチツールは、モデルパターンと同じパターンを画像から検出します。したがって、こういった模様はモデルパターンから取り除く方が検出が安定します。
以下は、マスクしてモデルパターンから取り除きます。
③明暗の向きが一定しないところ
物体の位置や角度が変わることで、照明の当たり方や影のでき方が変わり、画像に写った像の明暗の向きが変わることがあります。前述のように、パターンマッチツールは明暗の向きが変わると違うパターンであると認識します。
実際のワークをカメラで撮り込んでみる場合、全体としては明暗の向きが変わらないが、部分的には明暗が逆になって見える箇所があることはよくあります。このような箇所は、②同様見え方が一定しないので、マスクしてモデルパターンから取り除いておく方が検出が安定します。