アーク溶接命令はロボットにいつ、どのように溶接を行うかを指示します。2つのアーク溶接命令があります。
アーク溶接開始命令
アーク溶接終了命令
溶接中に実行される動作文でのヨウセツソクドについては、4.9."移動速度"を参照ください。
アーク開始命令はロボットに溶接の開始を指示します。溶接実行中に溶接パラメータを変更するために使用することもできます。
アーク開始命令には3つの基本形式があります。
アークカイシ[i]
アークカイシ[レジ[i]]
アークカイシ[..., ...]
命令を挿入した時の標準の形式は「アークカイシ[i]」です。編集画面で命令にカーソルを合わせてファンクションキーに表示される他の2つの形式のうちの1つを選択することにより、形式を変更することができます。表示されるファンクションキーは存在する命令形式によります。
TEST 0 ギョウ T2 シュウリョウ TEST E1 カクジク 10 % 1/2 1: アークカイシ[1] [オワリ] 条件番号を入力してください レジスタ 直接指定 [選択]
アークカイシ[i]命令は指定された溶接条件を使ってアーク溶接を開始します。
アークカイシ[レジ[i]]命令は、指定されたレジスタに設定されている溶接条件番号を使ってアーク溶接を開始します。
アークカイシ[..., ...]命令は命令に指定された溶接パラメータの値を使ってアーク溶接を開始します。パラメータの数、名前および単位は溶接プロセスと溶接装置の設定によります。
標準のMIGおよびTIG溶接プロセスでは、溶接パラメータは電圧、電流、ワイヤ送り速度です。これらの設定では、アークカイシ[..., ...]命令は表16."アークカイシ[..., ...]命令"に示す形式となります。
表16.アークカイシ[..., ...]命令
アークカイシ[..., ...] | |
[v, wfs] v:溶接電圧(V) wfs:ワイヤ送り速度(mm/sec、cm/min、inch/min) |
ワイヤ送り速度制御のMIG溶接 |
[v, a] v:溶接電圧(V) a:溶接電流(A) |
溶接装置設定画面で溶接電源制御が電流と設定されているMIG溶接 |
[a, wfs] a:溶接電流(A) wfs:ワイヤ送り速度(mm/sec、cm/min、inch/min) |
ワイヤ送り速度制御のTIG溶接 |
[a] a:溶接電流(A) |
溶接装置設定画面でTIGワイヤ送り制御がなしと設定されているTIG溶接 |
他の溶接プロセスでは表に示されていないパラメータを持っていることがあります。
以下のアーク溶接機能のいずれかが使用されている場合、溶接プロセス番号(WPn)と呼ばれるパラメータがアークカイシ[..., ...]命令とアークオワリ[..., ...]命令に表示されます。
溶接プロセス/溶接プログラム選択
マルチプロセス
例えば、
1: アークカイシ[WP1,25.0V,250.0inch/min]
この番号は溶接条件画面の詳細画面で溶接条件に指定された溶接プロセス番号と同じ意味です。
溶接条件傾斜指定機能が有効の場合、以下のようにアーク開始命令に時間の値 t が追加されます。
アークカイシ[v, wfs, t ]
アークカイシ[v, a, t ]
アークカイシ[a, wfs, t ]
アークカイシ[a, t ]
傾斜指定の時間は秒の単位です。
電源投入時に傾斜指定が有効の場合、システム変数$AWSPCR_P.$AS_TIM_ENABはTRUEに設定されています。これは時間の値の表示を有効にします。傾斜指定を無効しても、時間の値はまだ表示されています。時間の値の表示を消すためには、$AWSPCR_P.$AS_TIM_ENABをFALSEにします。
プログラム編集画面の「編集」のファンクションキーによるメニューに「コメント」があります。レジスタ命令やI/O命令において、コメントの表示/非表示を切り替えることができます。また、アークカイシ[...,...]命令とアークオワリ[...,...]命令において、単位の表示/非表示も切り替えます。例えば、
1: アークスタート[25.0V,250inch/min]
の単位を非表示とすると、
1: アークスタート[25.0,250.0]
となります。
アーク終了命令はロボットに溶接の終了を指示します。アーク終了命令には3つの基本形式があります。
アークオワリ[i]
アークオワリ[レジ[i]]
アークオワリ[..., ...]
これらの形式はアーク開始命令で記述されている形式とほとんど同じです。ただ1つの違いは、アークオワリ[..., ...]においての時間の値の意味です。アーク終了命令での時間は通常クレータ処理時間です。
クレータ処理中に溶接条件傾斜機能を使用できます。この機能を使用するためには、システム変数の$AWERAMP[1].$RAMP_CRATERをTRUEに設定してください。
アークオワリ[i]は指定された溶接条件でアーク溶接を停止します。
アークオワリ[レジ[i]]は指定されたレジスタに設定されている溶接条件番号を使ってアーク溶接を停止します。
アークオワリ[...,...]命令はアーク溶接を停止します。命令の形式は、溶接種類(MIG、TIG)と溶接装置の設定によります。各種のアークオワリ[...,...]命令の説明は表17."アークオワリ[..., ...]命令"を参照ください。
表17.アークオワリ[..., ...]命令
アークオワリ[..., ...] | |
[v , wfs, t] v:溶接電圧(V) wfs:ワイヤ送り速度(mm/sec、cm/min、inch/min) t:遅延時間(s) |
ワイヤ送り速度制御のMIG溶接 |
[v, a, t] v:溶接電圧(V) a:溶接電流(A) t:遅延時間(s) |
溶接装置設定画面で溶接電源制御が電流と設定されているMIG溶接 |
[a, t] a:溶接電流(A) t:遅延時間(s) |
溶接装置設定画面でTIGワイヤ送り制御なしと設定されているTIG溶接 |
[a, wfs, t] a:溶接電流(A) wfs:ワイヤ送り速度(mm/sec、cm/min、inch/min) t:遅延時間(s) |
ワイヤ送り速度制御のTIG溶接 |
アーク開始命令とアーク終了命令はマルチ装置オプションがインストールされていると表示が変わります。前述した3つの基本形式はそのままですが、1つのアーク開始命令と1つのアーク終了命令の代わりに、プログラムの装置マスクで定義された各溶接装置ごとにアーク開始命令とアーク終了命令が存在します。例えば、
アークカイシ E1[i]
アークカイシ E2[i]
アークオワリ E1[i]
アークオワリ E2[i]
以前は、アーク溶接プログラムの装置マスクは1つの装置しか指定できなかったため、プログラム中のアーク開始命令とアーク終了命令は指定された溶接装置の制御だけを行っていました。現在は、装置マスクにより2つ以上の装置を選択できます。つまり、1つのプログラムで複数のアーク溶接装置を制御できます。従って、アーク命令でどの溶接装置を開始したり終了したりするかを明白にすることが重要になります。
マルチ装置オプションがインストールされ、定義されている溶接装置が1より大きい場合、アークカイシ En[...,...]命令は他のパラメータを持ちます。最後に列挙されるパラメータで、アーク開始を同期させる装置番号を指定します。以下のプログラム例は1つのTPプログラムで2つの装置でのアーク開始の同期を示しています。
1:カクジク イチ[1] 40% イチギメ : アークカイシ E1[25.0,200.0,E2] 2: アークカイシ E2[25.0,200.0,E1] 3:チョクセン イチ[2] 20.0inch/min イチギメ : アークオワリ E1[1] 4: アークオワリ E2[1]
この例では、アークカイシ E1はE2との同期を指定しています。同様に、アークカイシ E2はE1との同期を指定しています。この結果、2つのアークが同時に開始します。3行目の動作は両方のアークが開始したら始まります。